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奈良県景観調和デザイン賞

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教育事業委員会デザイン賞部会報告

奈良県建築士会では奈良県他の後援を頂き、奈良県の恵まれた伝統や自然環境と調和し、すみよいまちの創造と景観形成に寄与した建物やまちなみなどを「奈良県景観調和デザイン賞」として表彰してきました。第14回目を数える今回、下記のとおり受賞作品が決定しました。

第14回奈良県景観調和デザイン賞

知事賞

白庭台幼稚園

所在地:生駒市白庭台
施主:学校法人みどり学園
設計者:株式会社コンパス建築工房
施工者:村本建設株式会社

会長賞

薬師堂の家

所在地:奈良市薬師堂町
施主:三井田 康記
設計者:三井田建築事務所(畿央大学教授)
施工者:株式会社中尾組

奨励賞

富雄の住宅

所在地:奈良市富雄
施主:金子 哲也
設計者:阿久津友嗣事務所
施工者:ヒロタ建設株式会社

審査委員長賞

王寺の家

所在地:北葛城郡王寺町
施主:光澤 啓逸
設計者:ycf/山下喜明建築設計事務所
施工者:大勝建設株式会社

第14回奈良県景観調和デザイン賞審査評

観光都市奈良は少しずつ「綺麗」にはなってきているが、「美しく」なってきたとは言えない。綺麗ではなく美しくならなければならない。
日本の辞書によると、綺麗も美しいも同意語とされているが、「綺麗」と「美しい」は別ものである。「綺麗」の本質はサニタリー(衛生的) であり、その反対語は汚いである。
「綺麗」な花も短命で直ぐ汚くなって落ちる。
法隆寺は1400年経っても未だに美しい。「美しい」の本質は「古美る」、すなわち古くなるほど美しさを増すのである。
奈良の街はこの「古美る」をデザインポリシーとしなければならない。奈良に限らず世界の古い街は全て綺麗ではなく美しいのである。

今日、サスティナブル(持続可能)な街造りと盛んに言われている。サスティナブルな街造りとは「古美る」を本質とした街造りでなければならないことになる。
さて、奈良や京都、そして世界の“古都”が古くなるほど美しくなってきたのはなぜか。それは建築が全て素材で出来ているからである。素材の本質は正直であり古美るのである。
現代建築の多くはケミカルな建築材料を使用している。例えばプレハブ住宅と言われる建物の外装はサイディングと呼ばれる建材で出来ている。サイディングは煎餅の様に薄っぺらでありながら、煉瓦や石や木等々、何にでも化けて嘘つきであり、素材のように正直ではない。

日本の美学を表す「侘び」の本質について武野紹鴎は「正直で慎み深くおごらぬ様を侘びという」としている。公共建築や住宅建築は正直な古美る素材で造らなければならない。
ケミカルな材料は流行と経済の活性化の為に商業建築等に使用すれば良い。
奈良の街造りは素材で造るべきである。

知事賞「白庭台幼稚園」

周辺住宅の規模に合わせて建物を各エレメント毎に小さく文節化し、又、建物の外壁を黒っぽい板張りとし、優しくしたのも好感が持てた。白い軒先は伸びやかでモダンである。「ぬばたまの黒」と「白妙の白」、特別な色として枕詞を持つこの二色の対比は、伝統的な深みも醸している。

会長賞「薬師堂の家」


今回の入賞作品の中で唯一奈良らしい作品と言える。二階の虫籠窓の格子を細くしたのが現代的でモダンであり、一階にある連子格子の細さと相まって違和感がなく良い。
又、奥深い廊下の敷石と腰板張りの間合いに黒砂利を敷き、間合いを面白くしていて良い。

奨励賞「富雄の住宅」

この家の立地は新興地なのか、奈良的なものが周辺に見当たらない。だからといって奈良的でなくても良いという訳ではないが、瓦・土壁・石等を使った“伝統的な奈良”ばかりを求めすぎると、ともすれば街や景観はマンネリズムで退屈なものになる恐れがある。
この建物はいわゆる“奈良”らしくはないが、建築そのものはモダンな美しさがある。特に正方形の白い3個のブースが屋根、外壁と間合いを取り表現されている等、家のプライマリーなものへと還元しようとするところが面白い。

審査委員長賞 「王子の家」

この家も富雄の家と同様の立地条件で、奈良的なものは周辺に見当たらない。正方形なカラートタン(無機)の家と板張り(有機)の  型の家は一見前衛的に見えるが、実は日本の伝統的な二元対比の美学であり、中庭による間合いの取り方にも「和」が上手く織り込まれている。足元を浮かし地面との間合いを取ったのは良いが、床下が物入れ替わりになっており、雑物が丸見えで失敗している。格子を入れて見せなくすればよかった。


審査委員長 出江 寛




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