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奈良県景観調和デザイン賞

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教育事業委員会デザイン賞部会報告

奈良県建築士会では奈良県他の後援を頂き、奈良県の恵まれた伝統や自然環境と調和し、すみよいまちの創造と景観形成に寄与した建物やまちなみなどを「奈良県景観調和デザイン賞」として表彰してきました。第15回目を数える今回、下記のとおり受賞作品が決定しました。

第15回奈良県景観調和デザイン賞

知事賞

東大寺総合文化センター

所在地:奈良市水門町
施主:宗教法人 東大寺
設計者:株式会社建築研究所アーキヴィジョン
施工者:共同企業体(株式会社大林組 三和建設株式会社 株式会社ゴセケン)

会長賞

奈良町宿 紀寺の家

所在地:奈良市紀寺町
施主:藤岡 清
設計者:藤岡建築研究室
施工者:ヒロタ建設株式会社 株式会社ツキデ工務店

奨励賞

第162母屋 天理教河原町大教会信者詰所

所在地:天理市田井庄町
施主:宗教法人 天理教
設計者:株式会社竹中工務店
施工者:株式会社竹中工務店

審査委員長賞

櫛羅の家

所在地:御所市櫛羅
施主:田中 英嗣
設計者:田中 英嗣
施工者:株式会社Yoshikawa

第15回奈良県景観調和デザイン賞審査評

奈良に限らず京都や金沢等、日本の古い街は美しい。
それは、木・土・石・瓦による素材で造られていて情緒的であるからだ。現代建築の多くはドライで貧相になった。それは、ケミカルな材料で造られ、又、屋根には省エネの理由で太陽光パネルが多く見られるようになり、古い街にはそぐわない。そして、建築基準法による拘束によって自由なデザインが出来なくなったこと等により、益々ドライで貧相になってきた。
奈良のような古い街には、今の建築基準法だけではなく、奈良独自の更に厳しい美的・景観条例に改正すべきである。
その様な現状の中での景観賞審査は非常に難しいが、私は審査基準(ポリシー)をその建築が饒舌ではなく、美しく「沈黙」が存在しているかどうかで決めることにした。それは奈良や京都が寺町という神仏の街であり、奈良の街の本質は沈黙にあるからだ。
哲学者のM・ピカートは「人間の本質は言葉であり、神の本質は沈黙である。キリストは沈黙の人であった」としている。又、「沈黙は何の役にも立たず何の経済活動もしないが、唯一、人間の心を癒すものである」としている。
昔の古い街には沈黙が確かに存在し、人間の心を癒すものであった。
現代建築・都市はその沈黙を失った。

知事賞「東大寺総合文化センター」

一休禅師の美学に「眞・行・草」の美学がある。これは、字で言うなら楷書・行書・草書の意味である。この建築は、眞態のデザインである。これは、神・仏・天皇家等への形態を示す。端正な形であり力強くモダンである。それは本瓦葺きの太い影と瓦の素材感、そして深い軒下の影の深さに「沈黙の美」を見せていることである。

会長賞「奈良町宿 紀寺の家」

このオーナーは、お茶・お華等日本の美学、侘びの精神に精通しながら、実に洒脱でモダンなお人柄の方だと感心した。建物の復元も良くできており、路地は一休禅師における「草態」の空間としている。これは、決して外国人には真似の出来るものではない。侘び、即ち「沈黙」が存在している。又、古民家を宿として再生し、街おこしや活性化にも一役かっていることも素晴らしい。

奨励賞「第162母屋 天理教河原町大教会信者詰所」

この建築は、壁を主体としており、実に普通である。しかし、白壁に慎重に穿った窓とのバランスに聖なる精神性を感じさせ、「眞態」のデザインとして卓越してうまい。
これこそ普通性の高まったデザインである。普通性を高めることは、奇を衒い変わったデザインよりも遥かに難しい。
設計者は、かなりの手馴れであろう。普通性の高まりとは「沈黙」を意味する。

審査委員長賞「櫛羅の家」

昔の大工さんはどうしてこんなにデザインがうまいのだろうかと感心しています。誰が教えたのでしょうね。これが伝統と言うのでしょうか。
旧街道に面した郵便局舎は昭和の時期に増築されたものと思われる。ピンク色の建物を解体し、元の伝統的な屋敷構えに復元されているのだが、そこにかつてあった郵便局の(〒)型マークをうまく窓にデザインしているのが新鮮で深く印象に残った。
しかし、面格子や床板が素木(しらき)のままで白々しく感じ、残念であった。これ等は昔の色に倣って古色色にするべきだと思った。
昔の建物には確かに「沈黙」が存在していた。


審査委員長 出江 寛




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