最近、「人新世」という用語を耳にするようになりました。「人新世」は2000年にドイツのクルッツェンが地質時代の区分として提唱したもので、人類がもたらした変化が、地球の限界を超えつつあるという警告です。また、1992年の地球サミットでは、「気候変動枠組み条約」や「生物多様性条約」などが決められ、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsが国際社会共通の17の目標として定められました。これらの目標の達成という視点で運営方針・事業計画を次のようにしたいと考えます。
奈良県と木材事業者が連携して公共建築物の木造化推進の取組みを進めており、昨年度に、発注者向けの手引きを作成しました。今年度は、奈良県と木造建築物の推進のための協定を締結し、講習会を開催します。建築物、住宅の省エネルギー化の推進も重要な取り組みです。「省エネルギー基準の適合」の義務化の法律改正を踏まえ、啓発を進めます。木材の活用や省エネルギー化は、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策」や目標15「 陸の豊かさを守ろうー森林の持続可能な管理」に関わるものです。
地震や風水害の甚大な被害が毎年のように繰り返し発生しています。防災・減災、そして復旧・復興にわれわれ建築士の果たす役割は益々重要となっています。災害対応活動への支援や災害に強いまちづくりに取り組みます。これは、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に繋がります。また、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する施設づくりを担うことはSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉」に貢献します。
建築士の職域が多様化し、多様な専門家団体と役割分担しながら連携・協働を進めることが必要で、桜井市、大和郡山市では、まちづくり会社が設立され、それに建築士会の支部も関わり活動をしています。社会問題となっている管理されない空き家の利活用推進のため、生駒市、橿原市及び桜井市と協定を締結し、他の専門団体と連携し、空き家利活用推進のプラットホームに参画して活動しています。また、奈良県内の建築3団体と、昨年はJR畝傍駅に関する要望書を共同で提出しました。これらの活動は、SDGsの目標17「パートナ―シップで目標を達成しよう」に相当します。
奈良県では、数多くの建造物が文化財に指定され、その活用や維持保全が望まれています。建築士会では、奈良ヘリテージ支援センターを立ち上げ、各地で活動を進めます。また、新しく建築設計や施工における発注者支援事業にも取り組みを進めていきます。
これらの活動を進めるとともに、建築士の資質向上のため、既存住宅状況調査技術者の養成や、CPDの推進、専攻建築士の意義の向上等を連合会等にも働きかけたいと思います。特に、会員の減少は深刻な課題であり、状況を配慮した会員の在り方について引き続き検討します。
最後に、昨年度はコロナ禍の中でありましたが、各委員会や支部で工夫をして活動を進めてきました。本年度はより一層、広報に力を入れ、建築士会に対する一般県民の理解を深めたいと考えます。建築士としての職能からの知恵と技術を結集し、様々な仕組みを考え、これからも未来志向で進めて参ります。建築士会会員の方々には是非とも活動に参画し、建築士会を通じて社会に貢献して頂きたいと思います。