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奈良県景観調和デザイン賞

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教育事業委員会デザイン賞部会報告

奈良県建築士会では奈良県他の後援を頂き、奈良県の恵まれた伝統や自然環境と調和し、すみよいまちの創造と景観形成に寄与した建物やまちなみなどを「奈良県景観調和デザイン賞」として表彰してきました。第13回目を数える今回 下記のとおり受賞作品が決定しました。

第13回奈良県景観調和デザイン賞

知事賞

奥村記念館

所在地:奈良市春日野町
施主:(株)奥村組
設計者:(株)奥村組 西日本支社一級建築士事務所
施工者:(株)奥村組 西日本支社

会長賞

餅飯殿Cube計画

所在地:奈良市餅飯殿町
施主:奈良もちいどのセンター街協同組合
設計者:勝村建築設計事務所
施工者:森建設 株式会社

奨励賞

ES house-01

所在地:磯城郡三宅町伴堂
施主:荒木 孝
設計者:ATERIERーASH
施工者:株式会社 出口工務店

審査委員長賞

奈良阪の家

所在地:奈良市奈良阪町
施主:山崎平次
設計者:藤岡建築研究室
施工者:有限会社 羽根建築工房

第13回奈良県景観調和デザイン賞審査評

奈良の本質は沈黙である。ドイツの哲学者マックス・ピカートは「人間の本質は言葉であり、神の本質は沈黙である」さらに「沈黙の本質は人間の心を癒すものである」としている。奈良や京都は死者を祀る都市である。このことから、沈黙の街といえる。さて奈良のデザインポリシーは「沈黙」をデザインすることである。これが奈良らしさの本質である。景観賞の審査にあたって、その沈黙を背景としたモダンな建築を選びたいと思った。

ところで、わが国の古い大切な精神として「侘び」の心がある。「侘び」とは「正直で慎み深く驕らぬさまである」と武野紹鴎が千利休に教えている。

近年とみに見かける上等そうな木目や石目に見せたサイディングやビニールクロス、プリント合板、また大理石や御影石に似せたプラスティック製品等々の新建材はいずれも不正直な表面的なものであり、ポテンシャルを感じることはできない。新建材は「古美る」ことができないのである。「古美る」(=古くなるほど美しくなる)ことができる文化的な美しい建築や街を創るためには、正直な材料である「素材」を使うことが重要である。

知事賞「奥村記念館」

奥村記念館は軒先を本館と切り離し、間合いを置いて瓦屋根を前面に出し、街並みに軒先を揃えているのには好感がもてた。 黒く深く落ち着いた外壁と駒返し格子の面と線の対比、そして大きな硝子面はこれから発展していくであろう奈良の街の新しい景観の魁となるだろう。

会長賞「餅飯殿Cube計画」


「もちいどの」という奈良の古い商店街にあって、奈良的とはいえないが構造体のないほっそりとしたフレームハウスが新鮮であった。こうした新しい形が奈良的に表現されれば素晴らしいと思った。その時代の社会的なニーズによって簡単に取り換えられる“商店街の建築”として一石を投じている。

奨励賞「ES house-01」

奈良らしさのないあまり奨励できるものとは思っていない。しかし、奈良の景観を支配している素材である木、土、石、瓦のマンネリズムを打破したいという若い審査員の思いからこれが選ばれた。街が次第に凶暴的になってきた今日、建築の素材も優しいものだけでは駄目になった。“奈良にふさわしいコンクリート打放し建築”を考える端緒となってほしいと思った。 この建築の内部はコンクリートの外部構造とは縁を切って、自立した木造建築となっている。住む人には優しく、外部はコンクリートとして、都市の凶暴化や耐震・耐風等に対処している。新しいスタイルといえるだろう。

審査委員長賞 「奈良阪の家」

北面の窓がアルミサッシであるのがよくない。少し高くついても外部に木製建具を入れ、二重サッシとしていればと思われたが、それを除けば聚楽壁と瓦の仕事がよく、普通性の高まった格調高い、プロポーションのよい家である。


審査委員長 出江 寛




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